ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

42.メモリーカード(遺伝子の意) Breaking The Habit オモテ/寄生虫

この皮膚の下を這い回るような、その、リアルな感覚は血で、洗い流さなければ満足できない程僕の中で大きくなっていた。
それはまるで、寄生虫が皮膚の下を這い回っているようだった。

僕の子供があの人との間にできたって知ったとき、僕は激しく後悔した。
僕の遺伝子をこの世界のどこにも残してはいけないと、否、僕の遺伝子をこの世界のどこにも残さないと決めていたからだ。
僕は、僕で終わりで良い。
それなのに、矛盾している。何故だろう、僕は試したかったのかもしれない。
僕の撒いた遺伝子をどこまで操作できるか、どこまで排除できるか。
恐怖だ、僕は狂ってる。
いいや、僕が狂ってるんじゃなくて、世界が狂ってる。
飽きたら、いつまでもしがみつくんじゃなくて棄てればいい。
人間だって、物と同じに棄ててしまえば、僕に害は及ばない。
何もかも、僕の気分次第で思うようになるはずなんだから。


「陽一郎さんは、うれしくないの?」

そう言う彼女を抱きしめて、僕は思いっきり作り笑いを顔に張り付ける。

「うん、うれしいよ」

僕の新しい玩具であり、汚れ無き新しい人間だ。

「でも君にひとつだけ、忠告しなきゃいけない」

不思議そうに彼女が首を傾げ、僕を見つめてる。

「僕は、この子に最後まで責任がとれるか分からない」
「何・・・言ってるの?」
「僕の気持ちをそのまま伝えただけだけど?」
「あたし・・・てっきり・・・」
「思い込みほど怖い物はないって、事だよ」

僕は笑う。
彼女の手を握る。

「冷たい手。」

なんだか機嫌がいい、また、僕が笑う、今日の僕はよく笑う。
彼女は僕の手を握り返さなかった。
温かい手。
僕にはとうていなれそうにない、暖かくて、綺麗な手。

「大丈夫、安心して、しばらくは君と暮らすから」
「家族・・・って呼んで良いの?」

馬鹿らしいと思いながらも、僕に家族ができた。
僕は生まれたときから家族が居なかったから、家族がどういう物か知らない。
よく、小さい頃は動物園の猿山を見て、あれが家族って物なんだろうか、なんて馬鹿な想像をしたけど、結局家族がなんだなんて、分からなかった。
だから、家族は必要ない。
女と、子供が、男と暮らして寄生虫のようにつきまとうもの。
そんな考えが頭から離れない。

「・・・・・・それは、僕の方が聞きたいくらいだよ」

僕は、また、笑った。


それから、子供が産まれて、その子は松谷古都治という。
焦げ茶色の髪をした、瞳の綺麗な男の子だ。
よく、僕に似てるって、言われるけど僕はよく分からなかった。
僕の遺伝子を持ったそれが、泣いて、笑って、生きている。
赤ん坊を見たのは初めてで、あまりの小さに本当に生き物なんだろうか?って疑問を持つくらいだ。
このこと、彼女が、僕の寄生虫
さらにしばらくして、僕は牢屋にはいることになるんだけど、そのときにこのこと彼女は飽きたから、棄てた。
まぁ、古都治については、まだ他に遊ぶ当てがあるから良いけどね。
彼女にはもう飽きた。
そして、この話はまた別のところで語られるだろうね。
つらつらと僕の考えや、出来事をつづってしまったから、なんだか悪い気がするけど、僕が撒いた遺伝子で飽きるまで遊ばないと、この肌の下を這う寄生虫の感覚は消えないんだろうって思うよ。

松谷陽一郎