#小説
はじまり こんな都市伝説を知っているかい? ガラス玉のように透明で深い深い青緑色の瞳を持つ、死神の話さ。 彼は有名なヒトゴロシの被害者の一人。 ヒトゴロシに恨みを持った彼は死神として甦った。 けれど死神として生きるには自分もたくさん人を殺さなき…
『あぁ、急がなくては!』今日は満月の夜だ。 石段には桃色の椿の花がたくさん敷き詰められていた。 もうすぐ『ゆめうつつ』が生まれるのだ。 私は風呂桶いっぱいにミルク風呂を涌かした。 甘いミルクの匂いが鼻腔をくすぐる。 更に蜂蜜をたっぷり入れ『ゆめ…
かすかな物音に振り返る。 黒い柴犬のような犬がこちらをじっと眺めていた。 私は犬が苦手なので、犬から視線をそらし足早に立ち去ろうとしたその時。 「おい、そこの人間。毎日この道を通るが散歩コースなのか?」 犬がいる方向から声が聞こえ、私は耳を疑…
だいぶ前によく遊びに来てくれる&行く三日月さんのブログに書かれていた『父と息子』バージョンを読んで、自分もやってみたくなったのでやってみました。 (ちなみにかなり前ですが許可をいただいています) えっと・・・では、スタートっ! 殿Ver 「春日!春…
たとえば、音というものが目に見えた場合の話をしようか? それはきっと、無数の透明な光の渦だ。 何本もの光の筋が複雑に絡まり合い、干渉しあい、束になって鼓膜をふるわせている。 つまりはそう言うことだ。 目に見えなくとも確かに存在している。 読書中…
これで、100話全て書き終えます。シリーズ状になってるものが中途半端になっております。 それについては、今後ちょっとずつ消化していきます。 義務でなく、かきたくなるときがあるから。 では、100話目お楽しみ下さい。 生まれてからずっと、市内か…
小学校最後の夏休み、僕ととーちゃんは商店街の福引きを当ててアメリカにきていた。 そして、ここは、アリゾナ州北部の大渓谷。しかも国立公園、長さ350辧⊃爾毅隠僑娃哀瓠璽肇襦ΑΑΔ修Δ世茵△海魁△匹Ωたって、グランドキャニオンなんだよ。 だけど、だけど…
侍こと、松島がお風呂に入ってる内、あたしはソファの上に寝転がった。 最悪な1日だった。 出社したら、あたしが元男だってばれてて、それを理由にクビになった。仕事を探して断られて断られ続けて、家に帰ろうと思って居たら変態に襲われそうになった。 ま…
俺が壬原千郷の魂を抜き取り元に戻してから、彼女には変化はなかった。いつも通りの壬原千郷がそこにいる。 「秀ちゃん、明日雨だって・・・一緒にいれないね」 携帯で天気予報を見ていた千郷が、空を見上げるのにつられ俺も空を見上げた。 千郷は毎日帰りに…
「女に男の名前か・・・」 女を後ろ手におさえている男が呟く、もう一人の男は女の鞄を無造作に漁り、女の社員証から名前を呼んだ。 「アレックス・ブラウン・・・ファミレスのウェイトレスか・・・」 「もういいでしょ、さっさと放してよ!!」 アレックス…
「で?なんだってんだい、油屋の息子が」 「しらねぇよ、そのあとぁ、三珠川でどざえもんになっておっちんだとか、辻斬りに殺されたとかぁ、名前を変えて生きてるとかぁ、色んな噂が飛びかってる」 団子屋の竹吉の所では今日もこんなうわさ話が飛び交ってい…
抜き身の刀を持ちながら、梅吉は竹藪の中を駆け抜けた。 鞘なんてとっくにどこかへ行ってしまった。 とにかく着の身着のまま長屋から飛び出してきたので、着物も身につけず、草鞋すら履いていない。 目の前に薄ねずの袴に、ねず色の着物を身につけた一人の浪…
雨、しかも深夜だというのにカラスが鳴いていた。 ぼんやりとする頭で駅から自宅までの道を一人傘さしながら歩く。人気はない。 自宅近くの暗くなった飲食店外でやっと人を見かけた。 子供だった。こんな時間に子供が?と疑問を感じつつ通り過ぎようとしたそ…
オレンジ色の猫を抱えた、白いフリルやレースの沢山付いたワンピースを着たゆる巻きカールの黒髪に、エメラルド色の瞳の女の子が、ピンク色のバラに囲まれた庭を走っていった。 ひとえにピンク色と言っても様々で、サーモンピンク、コーラルピンク、チェリー…
頭から冷水をかけられて俯いたまま、薄目を開ける。 気が付くたびに殴られていたので、口の中は傷だらけで目もまともにあかない状態だった。 銃口をあごの下に押しつけられて、髪を鷲掴みされる。 畜生。 悪態を口にする気力すらない。 「死体は?」 俺の目…
真っ赤な目をした化け物かと思った。 あぁ、あたし知ってる、この子はきっと吸血鬼だわ。 その子はあたしと目があって、唇を片方だけつり上げた。 多分、笑ったつもりなんだと思う。 秀ちゃんはあたしをかばうように前に立っていた。 「あぁ、真下秀か、丁度…
走っている、何かから逃げている、いったいなにからだろう? 少女はそんな疑念を抱きつつ走っている、走りながらふと目がいった先に冬枯れしたサルスベリの木。 夏の間に伸びた枝はからからに乾いて北風に揺れていた。 少女はいを決したように、今逃げてきた…
独白 空を見上げ立ちすくんでいた。 これからどうすればいいのか、どうするべきなのか。 何もわからないまま、ただひろい青空を眺めていた。 「何も、覚えていないんです」 刑事が僕の顔をのぞき込んだ。 目があったが僕は目を逸らさずに続ける。 「気が付い…
見渡す限りの砂漠を歩っていた。 茶色い岩と乾いた草が少し生えている。 夜になればコヨーテが闊歩して、家畜や人を襲うだろう。 空はどこまでも続いていそうなくらい真っ青で、その中に昼の月が浮かんでいる。 わたしは逃げていた。 コヨーテよりも狡猾で、…
黒デニムにちょっとよれよれのトレーナーを着てその上に黒のジャンパーを着た黒髪短髪のめがねをかけた男は、頬に冷たい風を感じながら、丸々太ったふわふわの冬の雀を眺めていた。 真下蜜雪だ、彼は冬になると思い出す出来事がある。 いとこの真下秀が、殺…
街で売ってる合法と名のつくドラッグを口に放り込んで、頭を馬鹿にしたかったがきかなかった。 だから、ヘッドホンから流れ出る音楽を大音量で頭にたたき込みながら、おじに弾丸をたたき込んだ。 叔父の脂肪だらけの体が、のたうち回り、辺りが血の海と化す…
喫水線から下の部分、僕の記憶は深く深く沈み込んで、船体の重さで浮上出来ないでいた。 太陽のまぶしさで目を覚ます。 気分良好。 秋の冷たい風が、頬に当たる。 ここは何処だろう。 辺りを見回す。 分からない。 けれどもここは、船の甲板のようで、手すり…
さぁいこうか、これで何回目? 人を撃ち殺した。 義父のベッドの枕元には、レミントンのリボルバーが一丁しまってある。 僕はそれで義父を撃ち殺した。 僕の義父はマフィアのボスで、僕が義父を殺したと知ったらどうなるだろう? たかが15才のガキに、ボスが…
俺の名は、セメダロン31!!接着剤(セメダイン)とアイスクリーム(毎月31日は31の日!!で有名なあそこのが特に)が大好きな人造人間だ!! 今日も、俺は、アイスを片手に地域の安全と平和を守っている!! 守って・・・まも・・・あーごめんなさい…
海に転げ落ちた。 高い断崖の上から、真っ逆様に転げ落ち、突き出した岩に当たりバウンドしながら海に沈んだ。 多分、僕は死んでいる。 海が異様に熱かった。 傷口に塩を塗り込んでいるような感覚、熱湯をかけられたような感じ。 何とも言えない、とにかく、…
葡萄棚の下を駆け抜けている人影。 黒地に金の竜の刺繍入りで裏地の赤い着物を着た、短髪銀髪の赤い縁のゴーグルの男。 身の丈は、170を優に越え、右手には赤い釘バットを持っている。 それを追うのは、臙脂の羽織を袖を通さずにはおり、白地に銀の虎の刺…
装弾数は8+1発あいつをやるには十分だ。それと道ばたの死体から勝手に拝借した、ニューナンブとグロッグ。 愛用の銃は、コルトダブルイーグル、俺が持つにはでかい銃かもしれないけど、あいつが俺にくれた唯一役立つものだった。 だから今も使用している…
極彩色の魚の中に、一匹だけ、黒い金魚が泳いでいた。 その金魚は、極彩色の中なので、他の魚たちと一緒の時は自分のことをトクベツだとは思わなかった。 しかし夜が来ると、黒い金魚は暗闇と一体化して、他の魚たちの中から姿を消した。 消した、と言う表現…
私が小さかったから、いつの事だか覚えていない。 確かに、ドイツを半分にわけていたその壁が破壊されている映像はよく覚えている。 国旗を背負い、半裸で、ハンマーを壁に叩きつける青年。 その壁を越えることは、死を意味していた時代の終焉。 そんな事言…
あたしの指が、キーボ-ドを叩くたびに言葉が生み出される。 言葉は繋がって文章となり、空気のようにそこら辺に漂う。 今までは、誰に気にとめてもらわなくても良かった。 あたしという空気を。 誰が気が付いたって気が付かなくたって関係なかった。 だって…