ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

74.合法ドラッグ

街で売ってる合法と名のつくドラッグを口に放り込んで、頭を馬鹿にしたかったがきかなかった。
だから、ヘッドホンから流れ出る音楽を大音量で頭にたたき込みながら、おじに弾丸をたたき込んだ。
叔父の脂肪だらけの体が、のたうち回り、辺りが血の海と化す。
硝煙の香り。
まだ、止めはささない、生殺しだ。
あいつが俺にしたことから考えたら、それでも生やさしいもんだ。
同じ恐怖を味あわせてやる。
おじにまたがって、眉間に銃口をおしあてる。
叔父の目からは涙が流れ出ていた。
口をぱくぱく、何かを言ってる。
聞こえない、きかねぇよ、あんたの言葉なんて、そのための音楽だ。
あんたも聞かなかった、俺の言葉を。
どんなに謝っても、慈悲を請うても、あんたは俺の言葉を聞かなかった。
見下す。
唇を片側だけつり上げて、笑う。
眉間からワザとはずして、両耳を連続して吹き飛ばす。要らないだろう?俺の声を助けを聞かずに無視し続けた耳なんて。
ドラッグが効いてきたか?硝煙の香りで脳がいかれたか?
見ているのもおぞましいぐらい叔父は、俺の足にすがりついて、何かを言っている。
今更、馬鹿らしい。
引き金を引く。
今度こそ、叔父の眉間に命中だ。
叔父の体がけいれんして、その先に待ちかまえる死を受け入れる準備をしている。
俺は、叔父の体から離れる。
次第に体の動きが緩慢になって、動かなくなる。
叔父は死んだ。
何だよ、ないてんのか?
自分の頬を伝うのは涙だ。
悲しんでるのか、喜んでるのか、ドラッグの所為か。
なんにしろ、自分を縛り付ける者はなくなった。
それは、苦痛の根元。
今日から俺は自由だ。
捕まったとしても、叔父と居るよりははるかにましだろう。
銃口を、こめかみにおしあてる。
暴発してくれたら、と願う。
何考えてんだ。
俺は死ぬわけにはいかない。
叔父の骸の上に、銃を放り投げる。
頬に着いた血と涙をシャツの袖で拭う。
音楽はまだリピートしている。
一生忘れないだろう、この曲を。
叔父の死に際の顔を。