ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

59.グランドキャニオン:宇宙人とぼく

小学校最後の夏休み、僕ととーちゃんは商店街の福引きを当ててアメリカにきていた。
そして、ここは、アリゾナ州北部の大渓谷。しかも国立公園、長さ350辧⊃爾毅隠僑娃哀瓠璽肇襦ΑΑΔ修Δ世茵△海魁△匹Ωたって、グランドキャニオンなんだよ。
だけど、だけど・・・グランドキャニオンの真ん中に、明らかに場違いな銀色の円盤が浮かんでいた。
「と、ととととと、とーちゃんあれ!!」
「ん?」
僕が指さす方向を見つめるとーちゃんの顔が、笑顔に変わる。
「なぁんだ、アメリカ名物のあれだ、ただのUFO・・・」
沈黙・・・。
僕が沈黙を破る。
「だから、UFO・・・」
「U・F・O・・・未確認飛行物体・・・」
とーちゃんと僕は叫びながら逃げようと藻掻いた、もがいたけれどもそのUFOは確実に僕たちに向かって飛んできていた。
そして、僕たちの頭上で、UFOはぴたりと動きを止め、円盤の下が円形に開き光が漏れた。
UFOからはずっと冷蔵庫みたいな音がしていた。
「ととととととーちゃん!!」
「ゆゆゆゆゆゆーたぁぁ!!」
僕ととーちゃんは抱き合って最後の瞬間を覚悟した。
多分僕達は宇宙人にさらわれて、脳味噌を開かれて人体実験されて、うわぁぁぁぁやだぁぁぁ!!
宇宙人の影らしきものが、地表へと降り立つ。
「く、く、くるな!!」
僕が叫ぶ。
「はろーぐっどもーにんぐ、えれふぁーんと?」
と、とーちゃん?いみわかんないよ。
宇宙人が手を振る。
「エレファーント、鼻長イネ!デモネ、キリンノガ好キダヨ、アヒルモスキダヨ」
沈黙。
「ドウシタ?モシカシテオイラニホレチャッタ?」
と、銀色の全身タイツのようなスーツか地肌か知らないけれど、そんな姿の宇宙人はいくぶんか頬を赤らめながら親指を立てた。
僕らは唖然としながら、宇宙人を見つめた。
「ア、ソウダネ、コレネ、冷凍ミカン。コレ凄インダヨ。冷タクテ美味シイシ、投ゲルト敵ヤッツケラレル、ライトセーバーヨリ凄イネ」
宇宙人が、僕達に冷凍ミカンを手渡した。
「アーアトネ、コレ、オ近ヅキノ印ネ・・・ユータ君ノ0点ノテスト、机ノ秘密ノ場所ニ入ッテタネ!!アゲル」
僕は、思わず宇宙人に駆け寄った、ありえねぇ、何故だ、何故あいつが僕のテストを持っている!!
僕は無言のまま宇宙人をひっぱたくと、テストをむしり取って破り捨てた。
「このはーげ。はーげ!!変態、ストーカー!!僕の部屋に勝手に入ったな!!」
僕が罵声を浴びせると、宇宙人はもじもじしながら上目遣い(多分)に僕を見つめた。
「オイラ、ユータ君ト仲良クナリタカッタダケダヨゥ・・・」
僕は、空を見上げた・・・どうすりゃいいんだ。