#小説
造園会社の畑の中で、片足が切断された男性の死体が発見されたのは、午前6時のことだった。 発見者は、畑の所有者である、造園会社の社長。 中山健三、47歳。 先代の社長がドロップアウトして、3年前に社長職を次いだばかりだった。 死体に血液の流れ出…
僕と、菊野香月は、施設で起きた無差別殺人事件の生存者として、別の施設に保護された。 施設、と言っても、今まで居たような実験施設ではなく、いわゆる孤児院のような物だった。 名字が違うのに、僕らは兄弟と言うことにされた。 別に名前なんて関係ないの…
再びの登場だ、俺はセメダロン31!! 人造人間で、ヒーロー(思い込み)で、謎の美少女(仮)兼おやっさんと一緒に世界の平和、もとい、地域の平和を守っている。 時には通学途中の子供達が危なくないように横断歩道に立ったり、商店街をアイスと接着剤を…
俺の名は、セメダロン31(サーティワン)アイスと接着剤が大好きな、人造人間だ。 人造人間と言ったら、因縁の好敵手、おやっさん、謎の美女、そして、俺がセメダロン31だと言うことの秘密。 そう、俺が、セメダロン31だというのは秘密なのだ。 そして…
「ねぇ、秀ちゃんはオムライスってどうやって食べる?」 吉田鈴美のリクエストで食事に入った、オムライスやさんで聞かれ、俺は少し迷う。 「真ん中からほじくって食べる」 「えー信じらんない、普通はじっこから崩して食べない?」 「信じらんないとか言う…
アパートの僕の隣の部屋に住んでいるのは、女性だ。 背の高いすらっとした美しい女性。 毎日夕方ハイヒールを履いて出かけていくから、多分水商売の女性だろう。 出勤時間が僕の帰宅時間と重なるときがある。 そう言うときは、軽く挨拶なんてしたりするんだ…
気に食わない物は、片っ端からぶっ壊した。 俺と同じように。 壊して、壊して、壊して。 最後に残ったのは、俺の瞳と同じ、すみれ色のベネチアングラス。 俺は、それをぐっとにらみつけ、左手でなぎ払った。 なぎ払った拍子に壁に当たって割れたグラスの破片…
電車が通り過ぎたあと、早朝で殆ど人が居ないホーム背後に気配を感じ、僕は懐から銃を取り出し、安全装置をはずしておく。 相手の銃口が自分の後頭部にたどり着く前に、俺は振り返り、そいつの眉間に照準を合わせる。 コートが翻る。男は笑う。 「物騒な物、…
30.通勤電車 いつもなら、ひどいすし詰め状態なのに、今日は様子がおかしかった。 なにやら、席はまばらに空いており、さながら、休日の早朝、と言った感じだ。 俺は、容赦なく、座席に着いた。 しかし、落ち着かない、何かが違う。 まるで、別次元にでも…
黒いアスファルトを白い雪がどんどん覆い隠している。 俺は、薬を飲み過ぎて、ふらふらの足取りで薄い雪の膜に足跡を付ける。 さらに気分が悪くなって、その場に膝をついた。 氷の様に冷たいアスファルトに体が吸い込まれたかのように、倒れる。 地面を観て…
私はこのお屋敷で長い間、執事をしておりました。 執事と言っても、このお屋敷に執事は私しかおりませんので、ただのお手伝い、又は家政夫 とでも言うのでしょうか。 執事と言うには、もったいないそんな仕事をさせていただいております。 ある日のことで御…
この前の桜ねぇさんの厳重注意からしばらく、桜ねぇさんの使いの子鬼(と言っても、僕たちよりも数倍年上だ)の姫菜と林檎が、ボクと遙さんの所に来た。 「てめぇら、何のつもりで、ここに入ってきた!!」 遙さんは叫ぶ、反対に、双子の子鬼姫菜と林檎は笑…
夕空には飛行機雲が長く長く金色に輝く筋を作っていた。 帰りの車の中、秀ちゃんは何か考えているようだった。 行きにかかっていたビートルズはとっくに終わり、次のディスクに変えてあった。何だろう、綺麗な音楽。 多分、クラッシックだ。 市内に入って、…
コンビニで買ったチョコレートを口に放り込みながら、外を見た。 深い青緑色の、そう、秀ちゃんが死神になったときになるような、きれいな色の、大きな湖が、きらきら輝ていた。 空は雲一つない青空。 アタシと秀ちゃんを乗せた車は、くねくねとした湖沿いの…
「ねぇ、シュウシュウ。ちょっと気になったんだけど」 この前発売されたビートルズのアルバムが、シュウシュウの運転する車のオーディオから流れてる。 シュウシュウは以外と、新しい物好きみたい。 ・・・っていうか、別に新しくもないのかな・・・。 でも…
日当たりの良い出窓の下の白い壁に僕達は膝を抱えて並んでいた。 優しげな表情の女性が、僕達にパンとミルクを運んできた。 僕達はその女性を見上げてパンとミルクを受け取る。 「ありがとうございます」 僕が女性に告げると、女性はまた、優しげに微笑み僕…
ぼんやりと覚えている、小さい頃の記憶。 俺と同じ色の赤い髪の緑色の瞳をした色の白い女性。 彼女はいつも微笑んでいた。 だけど、俺が観ていないときはいつも悲しそうな顔をしていた。 そして、その女性はある日を境に俺の記憶の中に現れなくなる。 金髪の…
頭の中で大きく鳴り響くサイレンに、誰も気が付かない。 『頭の中のサイレンなんて気にすんなよ、幻聴だ。』 黒い髪の深緑色の瞳の男が俺を見つめていた。 『誰?』 男は笑う。 『知ってるはずだろう?お前は、俺を。』 男が俺を見据える。その視線に俺はと…
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた・・・。 それは、誰にも見えない血。 所かまわずその血を垂れ流しながら、僕は生きている。 滑稽で、時に笑ってしまう。 どこから流れ出てるのか、場所を確かめようとするけど傷の場所なんて解らない…
「何のために生きてるってさ。足掻きながら戦うためだよ。生きるために」 俺の問いに古都治はそう答えた。 たばこの煙が、青空に溶けていく。 「学習したんだよ、色々あって。つか、葵春何でそんなはずかしー話俺にさすんだよ」 「たまにはあんたの考え、聞…
近隣住民から、土手の方から腐臭がすると通報があり、近場の交番に勤務する巡査が死体を発見。 そして、うだるような暑さの中、真下と上杉は土手に覆い茂った丈の高い草をかき分け、その穴を覗いた。 「この暑さと雨で一気に腐食が進んだんだろう。」 この腐…
ちょっと奮発して買った、冬物のスカート。 それにセーターと、ニットの帽子を合わせて、コートと手袋をした。 薄く化粧して、最後に大好きなピンク色の口紅を薄くひいた。 完璧。 時間通り、玄関の前で、あたしは秀ちゃんを待っていた。 秀ちゃんは、いつも…
「もう、君はまた無駄遣いをして!!君が使ってきた金があれで最後だったんだ!!なけなしの金だったんだよ!!それを・・・こんなものに・・・」 「いや、だって・・・ほら・・・バレンタインだし・・・」 ニコラの怒鳴る顔に半ば見とれながら怯える私は、…
「遙さん、起きてください、遙さん!!」 僕は、羽澄梅といいます。 で、こっちの金色の目、白い髪、黒に紅い裏地の着流しを着たゴーグルを着けてる何か寝てる人が、山本遙。 「あ、なんだ、お化けでもでたのか、梅。お化けぐらいでぐだくだ騒いでたら、これ…
「上杉ぃ、今日からプロファイルチームの何とかって言うのが、うちの課に配属になるって?」 「あぁ・・はい、なんでしたっけ?忘れました、プロファイルチームとか言って、結局机上の空論でしかないんじゃないですかね?」 刑事課でのプロファイルチームの…
閑静な住宅街の中にある、緑地帯。そこに女の死体があると通報が入ったのは、今から30分前のことだった。 「これって、よく塗装業者とかでビニール止めるのに使ってる、緑色のガムテープっすよね?この前うちのアパート塗装しに来てた業者も、こんなの使っ…
「おはよう」 声の主は返事を待たずにかってに俺の部屋に上がり込んだ。 「真下蜜雪さぁん、まだ寝てんの?」 俺が、迷惑そうに布団から顔を出した瞬間、声の主が勝手に雨戸とカーテンを開ける。 「うっ・・・」 朝の光のまぶしさに目をしばしばさせながら、…
質問;リポdのCMのようにピンチの時助けに来て欲しくないと本気で思うのはなに? 答え;生まれたての子馬。 理由:ふるふるしてるから。 「うわー確かに・・・」 幸甚はラジオ番組のネタ本を読みながら、妙に納得していた。 俺は、それ以上に、あの兄貴に…
「あんたが、青緑色の瞳の人殺しか。」 真っ青な瞳の少年が、あたし達を見つめ居ていた。 シュウシュウが、あたしの盾になるように少年の方へ歩み寄っていった。 「ふぅん、確かに、キレーな青緑色だね。で、あんたは自分が生きてた頃の名前で、人間に混じっ…
「ぐぉっふぉ、ぶぇふぉっ」 「どしたん?にゃーこ?」 「んー?なんかー朝起きたら、こんな事になってた」 しわがれ声になったネコを心配しながら、あめ玉を差し出す。 「んーのどあめ、この前、ファミレスで友達になった人からもらったんや、結構いけるで…