ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

#小説

69.片足

造園会社の畑の中で、片足が切断された男性の死体が発見されたのは、午前6時のことだった。 発見者は、畑の所有者である、造園会社の社長。 中山健三、47歳。 先代の社長がドロップアウトして、3年前に社長職を次いだばかりだった。 死体に血液の流れ出…

49.竜の牙

僕と、菊野香月は、施設で起きた無差別殺人事件の生存者として、別の施設に保護された。 施設、と言っても、今まで居たような実験施設ではなく、いわゆる孤児院のような物だった。 名字が違うのに、僕らは兄弟と言うことにされた。 別に名前なんて関係ないの…

43.遠浅

再びの登場だ、俺はセメダロン31!! 人造人間で、ヒーロー(思い込み)で、謎の美少女(仮)兼おやっさんと一緒に世界の平和、もとい、地域の平和を守っている。 時には通学途中の子供達が危なくないように横断歩道に立ったり、商店街をアイスと接着剤を…

45.年中無休

俺の名は、セメダロン31(サーティワン)アイスと接着剤が大好きな、人造人間だ。 人造人間と言ったら、因縁の好敵手、おやっさん、謎の美女、そして、俺がセメダロン31だと言うことの秘密。 そう、俺が、セメダロン31だというのは秘密なのだ。 そして…

39.オムライス

「ねぇ、秀ちゃんはオムライスってどうやって食べる?」 吉田鈴美のリクエストで食事に入った、オムライスやさんで聞かれ、俺は少し迷う。 「真ん中からほじくって食べる」 「えー信じらんない、普通はじっこから崩して食べない?」 「信じらんないとか言う…

81.ハイヒール

アパートの僕の隣の部屋に住んでいるのは、女性だ。 背の高いすらっとした美しい女性。 毎日夕方ハイヒールを履いて出かけていくから、多分水商売の女性だろう。 出勤時間が僕の帰宅時間と重なるときがある。 そう言うときは、軽く挨拶なんてしたりするんだ…

70.ベネチアングラス

気に食わない物は、片っ端からぶっ壊した。 俺と同じように。 壊して、壊して、壊して。 最後に残ったのは、俺の瞳と同じ、すみれ色のベネチアングラス。 俺は、それをぐっとにらみつけ、左手でなぎ払った。 なぎ払った拍子に壁に当たって割れたグラスの破片…

38.地下鉄

電車が通り過ぎたあと、早朝で殆ど人が居ないホーム背後に気配を感じ、僕は懐から銃を取り出し、安全装置をはずしておく。 相手の銃口が自分の後頭部にたどり着く前に、俺は振り返り、そいつの眉間に照準を合わせる。 コートが翻る。男は笑う。 「物騒な物、…

30.通勤電車

30.通勤電車 いつもなら、ひどいすし詰め状態なのに、今日は様子がおかしかった。 なにやら、席はまばらに空いており、さながら、休日の早朝、と言った感じだ。 俺は、容赦なく、座席に着いた。 しかし、落ち着かない、何かが違う。 まるで、別次元にでも…

97.アスファルト

黒いアスファルトを白い雪がどんどん覆い隠している。 俺は、薬を飲み過ぎて、ふらふらの足取りで薄い雪の膜に足跡を付ける。 さらに気分が悪くなって、その場に膝をついた。 氷の様に冷たいアスファルトに体が吸い込まれたかのように、倒れる。 地面を観て…

32.鍵穴

私はこのお屋敷で長い間、執事をしておりました。 執事と言っても、このお屋敷に執事は私しかおりませんので、ただのお手伝い、又は家政夫 とでも言うのでしょうか。 執事と言うには、もったいないそんな仕事をさせていただいております。 ある日のことで御…

28.菜の花(おにさん)

この前の桜ねぇさんの厳重注意からしばらく、桜ねぇさんの使いの子鬼(と言っても、僕たちよりも数倍年上だ)の姫菜と林檎が、ボクと遙さんの所に来た。 「てめぇら、何のつもりで、ここに入ってきた!!」 遙さんは叫ぶ、反対に、双子の子鬼姫菜と林檎は笑…

61.飛行機雲 3/3

夕空には飛行機雲が長く長く金色に輝く筋を作っていた。 帰りの車の中、秀ちゃんは何か考えているようだった。 行きにかかっていたビートルズはとっくに終わり、次のディスクに変えてあった。何だろう、綺麗な音楽。 多分、クラッシックだ。 市内に入って、…

55.砂礫王国 2/3

コンビニで買ったチョコレートを口に放り込みながら、外を見た。 深い青緑色の、そう、秀ちゃんが死神になったときになるような、きれいな色の、大きな湖が、きらきら輝ていた。 空は雲一つない青空。 アタシと秀ちゃんを乗せた車は、くねくねとした湖沿いの…

95.ビートルズ 1/3

「ねぇ、シュウシュウ。ちょっと気になったんだけど」 この前発売されたビートルズのアルバムが、シュウシュウの運転する車のオーディオから流れてる。 シュウシュウは以外と、新しい物好きみたい。 ・・・っていうか、別に新しくもないのかな・・・。 でも…

29.デルタ(三角形)

日当たりの良い出窓の下の白い壁に僕達は膝を抱えて並んでいた。 優しげな表情の女性が、僕達にパンとミルクを運んできた。 僕達はその女性を見上げてパンとミルクを受け取る。 「ありがとうございます」 僕が女性に告げると、女性はまた、優しげに微笑み僕…

35.長い髪の女

ぼんやりと覚えている、小さい頃の記憶。 俺と同じ色の赤い髪の緑色の瞳をした色の白い女性。 彼女はいつも微笑んでいた。 だけど、俺が観ていないときはいつも悲しそうな顔をしていた。 そして、その女性はある日を境に俺の記憶の中に現れなくなる。 金髪の…

91.サイレン

頭の中で大きく鳴り響くサイレンに、誰も気が付かない。 『頭の中のサイレンなんて気にすんなよ、幻聴だ。』 黒い髪の深緑色の瞳の男が俺を見つめていた。 『誰?』 男は笑う。 『知ってるはずだろう?お前は、俺を。』 男が俺を見据える。その視線に俺はと…

77.欠けた左手

ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた・・・。 それは、誰にも見えない血。 所かまわずその血を垂れ流しながら、僕は生きている。 滑稽で、時に笑ってしまう。 どこから流れ出てるのか、場所を確かめようとするけど傷の場所なんて解らない…

33.白鷺

「何のために生きてるってさ。足掻きながら戦うためだよ。生きるために」 俺の問いに古都治はそう答えた。 たばこの煙が、青空に溶けていく。 「学習したんだよ、色々あって。つか、葵春何でそんなはずかしー話俺にさすんだよ」 「たまにはあんたの考え、聞…

40.小指の爪(上下コンビ)

近隣住民から、土手の方から腐臭がすると通報があり、近場の交番に勤務する巡査が死体を発見。 そして、うだるような暑さの中、真下と上杉は土手に覆い茂った丈の高い草をかき分け、その穴を覗いた。 「この暑さと雨で一気に腐食が進んだんだろう。」 この腐…

37.スカート(鈴美)

ちょっと奮発して買った、冬物のスカート。 それにセーターと、ニットの帽子を合わせて、コートと手袋をした。 薄く化粧して、最後に大好きなピンク色の口紅を薄くひいた。 完璧。 時間通り、玄関の前で、あたしは秀ちゃんを待っていた。 秀ちゃんは、いつも…

44.バレンタイン(レスタトとニコラこの時代にはまだなかったんだけどね)

「もう、君はまた無駄遣いをして!!君が使ってきた金があれで最後だったんだ!!なけなしの金だったんだよ!!それを・・・こんなものに・・・」 「いや、だって・・・ほら・・・バレンタインだし・・・」 ニコラの怒鳴る顔に半ば見とれながら怯える私は、…

20.合わせ鏡(双子の鬼の話し)

「遙さん、起きてください、遙さん!!」 僕は、羽澄梅といいます。 で、こっちの金色の目、白い髪、黒に紅い裏地の着流しを着たゴーグルを着けてる何か寝てる人が、山本遙。 「あ、なんだ、お化けでもでたのか、梅。お化けぐらいでぐだくだ騒いでたら、これ…

51.携帯電話(古都治と上下コンビ)

「上杉ぃ、今日からプロファイルチームの何とかって言うのが、うちの課に配属になるって?」 「あぁ・・はい、なんでしたっけ?忘れました、プロファイルチームとか言って、結局机上の空論でしかないんじゃないですかね?」 刑事課でのプロファイルチームの…

24.ガムテープ(上下コンビ)

閑静な住宅街の中にある、緑地帯。そこに女の死体があると通報が入ったのは、今から30分前のことだった。 「これって、よく塗装業者とかでビニール止めるのに使ってる、緑色のガムテープっすよね?この前うちのアパート塗装しに来てた業者も、こんなの使っ…

93.Stand by me

「おはよう」 声の主は返事を待たずにかってに俺の部屋に上がり込んだ。 「真下蜜雪さぁん、まだ寝てんの?」 俺が、迷惑そうに布団から顔を出した瞬間、声の主が勝手に雨戸とカーテンを開ける。 「うっ・・・」 朝の光のまぶしさに目をしばしばさせながら、…

54.子馬

質問;リポdのCMのようにピンチの時助けに来て欲しくないと本気で思うのはなに? 答え;生まれたての子馬。 理由:ふるふるしてるから。 「うわー確かに・・・」 幸甚はラジオ番組のネタ本を読みながら、妙に納得していた。 俺は、それ以上に、あの兄貴に…

23.策略

「あんたが、青緑色の瞳の人殺しか。」 真っ青な瞳の少年が、あたし達を見つめ居ていた。 シュウシュウが、あたしの盾になるように少年の方へ歩み寄っていった。 「ふぅん、確かに、キレーな青緑色だね。で、あんたは自分が生きてた頃の名前で、人間に混じっ…

25.のどあめ

「ぐぉっふぉ、ぶぇふぉっ」 「どしたん?にゃーこ?」 「んー?なんかー朝起きたら、こんな事になってた」 しわがれ声になったネコを心配しながら、あめ玉を差し出す。 「んーのどあめ、この前、ファミレスで友達になった人からもらったんや、結構いけるで…