ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

45.年中無休

俺の名は、セメダロン31(サーティワン)アイスと接着剤が大好きな、人造人間だ。
人造人間と言ったら、因縁の好敵手、おやっさん、謎の美女、そして、俺がセメダロン31だと言うことの秘密。
そう、俺が、セメダロン31だというのは秘密なのだ。
そして、正義のヒーローセメダロン31の話題で街は持ちきりだ。
俺が、商店街をアイスを片手に歩くだけで、持ちきりだ。
もちき・・・あれ?ばれてない?

「セメさん、何ぶつくさ言ってるんですか?」
「やぁ、ハチじゃないか。と、言うか、セメとかいわんでくれ、そこらの隠れおたくどもに勘違いされるだろうが」
「別に良いじゃないですか、体型も顔も攻め系なんだから・・・」
「・・・・・・だから、困ってるんだろうが、俺は正義のヒーローなんだ!!」
と、まぁ・・・いつもこんな感じだ。
そ、そうだ、ハチのことについて、少し説明を加えておかなければならないな。
ハチは、謎の美少女とはほど遠いが、謎の美少女(仮?)兼、おやっさんだ、女の癖にいびきはかくは、バイオレンスだは、こいつを好敵手にした方が俺の評判が上がるんじゃないかってくらいの悪女・・・。
「攻めさん、あなたの思考回路、ばっつりきこえてるンだけど」
しまった、俺は人造人間、このバイオレンス悪女に全て俺の思考回路をスキャンされて居るんだった・・・ぐはっ!!
俺は、ハチの華麗な跳び蹴りを延髄に受け、顔面から地面に着地した、人造人間だが、痛覚ぐらいはある。
痛みでのたうち回る。
「は・・・ハチ、痛い、死ぬ、死ぬ、死ぬから、スンマセンでしたぁぁぁぁぁぁっ!!」
商店街の真ん中で土下座、ヒーロー形無し、俺って一体なんだ。
ハチは勝ち誇った笑みを浮かべてふん、と鼻を鳴らした。
「解れば宜しい、攻めさん、今日のお仕事なんですけどね」
「あ、いや、ここ商店街の真ん中だし・・・」
地面に正座したまま、ハチを見上げる。
ハチは俺を見下している。
完全に・・・あ、悪・・・これ以上言えない、言えば、また跳び蹴りだ。
また、鼻をふん、と鳴らす、これではまるで悪役だ。
「い、いや、やっぱり良いです、続けてください」
商店街の奥さん達、俺達のことを興味深げにガン見している。
当たり前だ、ここは奥さん達にぎわう商店街。
しつこいようだが商店街。
「ヒーローらしく、市民の安全に携わってもらいます。子供にも大人気ですよ、今日のお仕事は、お祭りの警備です。自治会からの依頼で、報酬は無いよりましってぐらいですが、仕事が殆ど無い今、仕事を選り好みしてる余裕はありません、せいぜい半日、頑張って下さい。私は、攻めさんが、生活に困らないよう、CIAにスパイに行って来ます。あと宜しく」
ハチはいい顔をしながら、軽やかに去っていった・・・。
ハチが年中無休のヒーローをしたらいいのに・・・しかしそれは、世間が許さないのだ、なぜなら、俺は人造人間セメダロン31!!
アイスと接着剤が大好きなセメダロン31!!
そう、俺はヒーロー!!
祭りの警備だって良いじゃないか、市民の生活を立派に守ってるぞ!!
ハチにおんぶに抱っこのひきこもりとは大違いだ!!
俺はヒーロー!!思いこめ、思いこむんだ、人造人間だから、ヒーロー!!

昼過ぎ、俺は路上に立ってガードマンが持っている例の赤い棒を振っていた。
子供達に握手をせがまれ、時に笑われ、奥様方にサインを求められ、アイスをもらい。
俺は、しっかり仕事をやりきった。
だって、俺は年中無休のヒーローだから!!