ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

39.オムライス

「ねぇ、秀ちゃんはオムライスってどうやって食べる?」
吉田鈴美のリクエストで食事に入った、オムライスやさんで聞かれ、俺は少し迷う。
「真ん中からほじくって食べる」
「えー信じらんない、普通はじっこから崩して食べない?」
「信じらんないとか言うな、みっちーだって、俺と同じ食べ方だよ。・・・あ、小瀧さんははじっこから食べてた。それで、みっちーに笑われてた」
俺は、先に運ばれてきたクリームメロンソーダを一口飲んだ。
鈴美はそれを見つめていた。
「秀ちゃん一家って面白いよね?」
「それは、どうも、っていうか俺的には普通なんだけどな」
俺が微笑むと、鈴美も笑った。
「おろし明太オムライスをお待ちのお客様・・・」
店員が言うと、鈴美がはいっと手を挙げた。
「お次、ホワイトシーフードオムライスのお客様」
店員は俺の前に皿を置いた。
サラダを俺と鈴美の間に置いて、席を去った。
「やっぱり、秀ちゃんの好きな物って、子供っぽいよね」
唇を片方つり上げて、俺は嬉しそうに鈴美を見つめる。
「いや、だって美味しいじゃん、こういうのって」
俺は、海老を口に入れた。
鈴美を観ると、少し困ったようにスプーンが止まっている。
「どうした?」
「えっと・・・どこから食べよう、明太とおろしがもっちゃりオムライスの上に乗ってて、秀ちゃんの食べ方しないと、上手く食べられないかも、でも、何かやだなぁ」
「やだとか言うな、ほじくって食べるのは楽しいんだよ、やってみろよ」
「だってぇ・・・」
「あーもー解ったよ。明太とおろし混ぜて、塗りたくって喰ったら?その方が楽だよ」
「あ、そうか・・・」
ぺたぺたと明太とおろしをオムライスに塗りたくっている。こいつの方がよっぽど子供じゃないか。
微笑ましげに俺が見つめているのに気が付いて、鈴美も俺を見つめた。
「な、なに?」
「いや・・・おもしろいなーと思って」
にひっと、俺が笑うのと同時に、後頭部にどつきがはいる。
「いてっ・・・って・・・あぁ!!みっちぃv」
にやにやしながら突っ立っている真下蜜雪がいた。蜜雪は俺のいとこで、年はだいぶ年上だけど、兄ちゃんみたいな存在だ。
「よう、だいぶいちゃいちゃしてたんで、むかいついてな、男二人で邪魔してやろうと思って・・・」
みっちーは、にこっと笑う。
みっちーの少し後ろに、小瀧嘉浩、みっちーの幼なじみで友達で、ある意味こっちもバカップルだ。親友だけど。
「邪魔して、ごめん。でも、面白そうだからついて来た。」
「こーたーきーさぁん?」
俺は、少し怒り気味に小瀧さんを見つめた。
苦笑しながらも、もの凄く楽しそうだ。
「お前等、電車だろ、帰り俺の車に乗ってけよ。電車代浮くだろ?」
みっちーは俺達の隣の席に座りながら言った。
「有り難う、みっちーさん、っていうか、本当なんですか?オムライスの食べ方」
「あぁ・・・聞いた?ほじくって食べるんだよ、真ん中から、その方が断然美味い」
鈴美は、ちょっとがっかりした風に、次は小瀧さんに視線を移す。
「え、俺?あぁ、はじっっこから崩して食べるけど、最近こいつ等(俺とみっちーを指しながら)の食べ方観てたら移って来ちゃって、今は半々だなぁ・・・」
「やっぱり、うつっちゃう物なんですか?」
鈴美はやけに熱心に小瀧さんの話を聞いている。
「あの、鈴美?」
「何?」
俺は苦笑しながら、鈴美を見つめた。
「小瀧さん、困るんじゃないの?」
「いやいや、別に、大丈夫。」
小瀧さんは微笑む。
「お前こそ、やきもちやいてんじゃねぇの?」
みっちーがにやにやと俺に向かっていった。
鈴美が、俺に視線を移す。
「安心して、あたしの目には秀ちゃん以外はカボチャに見えるから!!」
もの凄くいい顔をしながら、鈴美は親指を立てた、俺は苦笑しながら、溶けかけたクリームソーダを飲んだ。
明らかに、小瀧さんとみっちーはきょとんとしていたが、すぐににやにやしながら、俺達を観た。
鈴美、恥ずかしいよ・・・。