ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

77.欠けた左手

ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽた・・・。
それは、誰にも見えない血。
所かまわずその血を垂れ流しながら、僕は生きている。
滑稽で、時に笑ってしまう。
どこから流れ出てるのか、場所を確かめようとするけど傷の場所なんて解らないで、ただ胸の辺りが苦しくなるだけだった。
そのあと、結局僕はそれが滑稽で笑うのだった。
腕を伝って、指先からぽたぽたと流れ、床や路面に落ちていく血。
手を握ったり、開いたり。
それでもとまることはない。
たまに、力が入らなくなって、物を落としてしまったりするけど。
特に支障はない。
よくある、身体が言うことを聞かなくなるときと、全く同じだ。
ただ、身体全体が動かなくなるんじゃなく、左手だけが動かなくなる、それだけ。
今もキーボードを叩く僕の指先はその血で紅く染まっている。
汚いな。
笑ってる、また、僕は笑ってる。
ひどいときは、血を吐いているような気分にもなる。
誰も知らないだろう。
その血の伝わる感覚の、心地よさ。
何かがすぐそこまで来てる。
背筋が、寒くなる。
いきなり、頭の中に広がるイメージ。
自分の血なのかも、他人の血なのかも解らない。
腕を切り落としてしまいたくなる。
突き刺さって抜けない物。
いつからだろう。
このイメージは、いつから僕の中に居るんだろう。
したたり落ちる血は、いつから僕の中に居るんだろう。
なんの合図なんだろう。
どうすれば無くなるんだろう。
乾いた路面に、まるで童話の主人公の落としたパンのように落とす血の染み。
赤黒い血痕は、決して誰にも見えない。

これは、僕が処理すべき事柄の一部なんだろうな。
絶対にそうだ。