ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

25.のどあめ

「ぐぉっふぉ、ぶぇふぉっ」
「どしたん?にゃーこ?」
「んー?なんかー朝起きたら、こんな事になってた」
しわがれ声になったネコを心配しながら、あめ玉を差し出す。
「んーのどあめ、この前、ファミレスで友達になった人からもらったんや、結構いけるで!!」
無言で、頷き飴を口に放り込む。酢昆布と、モズク酢と、レモンと、キムチと納豆を混ぜたような味に、ネコが顔をしかめ、飴を吐き出す。
「んー!!何か、変な味するんだけど、これ」
「んなことあるかいな、今朝だって、俺この飴舐めてきたんやで?」
カバもまた、飴を口に放り込み、舌の上で転がす。
「んがーおぺっ!!なにこれ、不味い、めっちゃまずい、くそ不味い、あぁーーなんか、ヤバイよこれ!!」
「つか、カバ、お前、めっさ標準語なんすけど・・・」
「別にそんなこと良いから、がーまだ鼻に残ってる、良いから、良いから、早くあのファミレスいこか!!あいつ居てるかもしれんし」
「いや、だって、次の授業・・・」
「許せるかいな!!こないに不味いもん、人にくれて、今頃絶対布団の中で腹抱えて笑ってるにきまっとる!!それが俺にはゆるせへん!!笑うなら、俺の前で笑え!!笑いならいくらでもとったる!!」
ちっちゃい体を思い切り、威張らせながらカバはいった。
「・・・・・・笑いって、そのためですか・・・そうなんですか・・・」
「つか、次の授業さっちゃんやん、やっぱ、出とこうか?」
「いうと思った・・・」
因みにさっちゃんというのは、滝川幸(年齢不詳)普通にモデルとかしててもおかしくないくらい可愛くて、それで居てはっちゃけたキャラの英語教師だ。
その、さっちゃんにカバは今なついている・・・らしい。

「あぁ・・・さっちゃん、今日も可愛かったなぁ・・・そうおもわんか?ねこ」
そんなカバの様子にネコは、半ば呆れながら鞄に荷物をしまい込む。
「まぁ・・・ね」
適当に相づちを打ちながら、喉がかれてしわがれた爺さんのようになった声で、続けた。
「お前、さっちゃんばっかみてると、ストーカーにやられるぞ・・・」
と、いった瞬間、壁にネコの拳がめり込んだ・・・。
逃げ去る影・・・やっぱり出たか、伊倉。
伊倉は、カバのストーカーで、いつもカバのケツを追い回す変態ロリコンホモ野郎(ロリコンって・・・)だ。
鈍感なカバに変わって、見かけるたびにカバの周りの人間が追い払っている。
「じゃ、行くか・・・」
「なになにー今のなにー?めっさきになる、ネコおこってるん?」
「ちげーよ・・・」
喉ががらがらの癖に煙草に火を付けながら、例のファミレスへ向かった。

ファミレスの入って右側の喫煙席に、そいつは座っていた。
大体其処がそいつの指定席らしい。
「おいっ!!えっと、松谷・・・さん!!」
「あぁ、昨日の。えっと、樺島君だっけ?」
男は、机に本を置いて、座ったまま、二人を見上げた。
「昨日の・・・のど飴なんやけど」
「あぁ・・・あれ、のど飴じゃないよ!!俺が適当に調合した風邪薬もどきv」
「も・・・もどき?」
ネコが呟く。松谷は笑う。
「あれぇ、言ってなかったっけ?可愛い子には、びや・・・おっと、風邪薬をあげようってv」
「いや、今明らかに、媚薬とか言いそうになりましたよね、松谷さん、そもそも可愛い子には風邪薬って、意味解りませんから!!」
思わず、全力で、ネコが突っ込みを入れてしまった。
「いやぁ・・・ばれちゃぁしょうが無いなぁ・・・そうです、私が、かの有名な松谷古都治です!!(変なおじさんの顔で)」
と、言い終わる前に、ネコ、跳び蹴り・・・つーかここファミレスなんすけど。
「つか、俺、舐めちゃったじゃねぇか!!どうしてくれるんだよ!!」
「いやーんっv眼鏡を取るといいvうん、眼鏡取るときっと葵春にそっくりでよいと思うよv」
「誰だよ、葵春って」
「え?弟」
「とりあえず、外、いかへん?さすがに店ン中ちゅーんはやばいやん」
カバが二人をいさめたとき、丁度ひとりの女性客が店に入ってきた。
「あ・・・」
「あ・・・」
「さっちん・・・(はるっち・・・)」
人差し指でお互いをさしながら、カバとネコを挟んで松谷古都治と、滝川幸が立っていた。

「まっさか、ここでさっちんに逢うとは思ってなかったよ、で、この小憎らしいガキどもが、教え子なんですカ?(笑)」
「うん、一応教え子です」
「つか、俺等逢うの何年ぶりだっけ?」
「ついに脳味噌退化した?はるっち薬のやり過ぎじゃない?昨日逢ったばっかりだけど?」
「昨日って、なんで、なんで?」
「良いからお前は黙ってろ・・・全く・・・媚薬の件は・・・」
「ソーデスネ、昨日逢って、喧嘩して、2対1ってぜってぇ勝てねぇから、このファミレス来たらちいさいこがいたら、媚薬あげたんですー、もう、なんて言うか、あれだ、ほらほら、あれ、やけっぱち、みたいなー」
さっちゃん古都治の両頬を引っぱる。
「ばぁーか、はる!!この歩く薬事法違反、犯罪デパート!!はい、次はなんデスカーその、お口から言ってみようねーvもれなく、真下蜜雪さんの方にしょっ引いてもらうから」
「はべれない、はべれない、くひあひーれない(しゃべれない、しゃべれない口あけれない)」
だばだばともがきながら、何とか逃れようとするが、なぜか女子であるさっちゃんの方が強いらしく逃れられなかった。
そんなことをしてる家に、媚薬の効果が・・・。
「は・・・なん・・・か、でそう、・・・ヤバイ、ヤバイって、何か、ちょ・・・といれ。」
ネコが席を立つと、古都治は紅くなった頬をさすりながら、にやりと笑った。
「ふふ、来たか、媚薬の効果、つか、媚薬っつーか、あれなんだよ・・・あれv所で、樺島君は、舐めたの?」
「舐めたけど、別に変化あらへんなー」
にこりと笑う顔が、まるで少女のようだった・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・マジでヤバイって、なにこれ。えっと・・・とりあえず、こもろう。」
トイレの中にこもり、とりあえず、パンツの中を確認、胸をさわさわ。
「あぁ・・・声の調子は治ったけど、これって、ありえるんすかね・・・全く・・・」
ぶつくさ言いながら、壁にもたれかかる。
「俺って、やべぇよ・・・女ンなっちゃった(笑)」

「ネコ遅いなーあれかな、うん子、うん湖だろ」
「つか、樺島君、ファミレスで、うん湖うん湖連呼するんじゃないの!!」
「そう言ってる、さっちゃんだってうん湖って言ってるじゃんね、カバ君」
「そうだよ、ね、はるさん」
そんなことをしてる内に、ネコがトイレから戻ってきた。
「あの・・・俺、帰る・・・」
ふいっと、荷物を取ると、そのまま会計へ。
その後を、古都治が追う。
「あの薬、効いたんだね・・・」
そんなつぶやきを残しながら・・・。

「あぁぁ~~っ!」
ネコは公園で頭を抱えていた。
「ンだ、あぁぁ~~~!!」
とりあえず、うめきながら公園のブランコの上で、頭を抱えていた。
と、そこへ、古都治が追いついてきた。
「あ、いた。」
「あ、いたじゃねーよ!!なんなんだよ、これは!!」
「ただののど飴」
古都治は満面の笑みをたたえ即答する。
「ン、じゃなくてぇ!!だから、なんでただののど飴で俺の体がこんなんなるんだっつってんだよ!!」
「いや、そうじゃなくて、無料ののど飴。つか、せっかくだから、女子の体を満喫したら?なんなら俺が・・・」
「馬鹿、満喫できるか、つーか、なんであんたなんだよ!!良いから、早く元に戻してくれよ!!」
「まぁ、そう、焦らずにv大丈夫だよ、まーだラットで実験段階だったけどね、後、2,3時間もすれば元に戻るよv」
古都治は悪びれる気配もなく、にっこり微笑み、ネコを上から下まで見つめた。
「完璧だvつか、俺ってやっぱり天才v」
「・・・つか、カバは?あいつもあのあめ舐めた・・・」
「あぁ・・・何か、効かなかったね、何でだろうね、所で、君は煙草を吸ってる?」
「あぁ・・・」
「じゃ、その所為だよ・・・多分そうだ、きっとそうだ、その辺は後々研究するからさ。」
ネコは唖然としながらその背中を見つめていた。と、そこへ誰かが古都治に跳び蹴りをした。
横になりながら派手にスライディングをかます古都治を呆然と見つめていたら、そいつが、ネコに近寄り、何かを差し出した。
「ゴメンな、この馬鹿(首根っこもって引きずってる)が、変な薬をまた他人に試したみたいで・・・これ、やるから、なんつーか、解毒剤みたいなもんだ。こいつの研究所兼自宅からもって来たから。」
「あ・・・ありがとう・・・えっと」
「あ、あぁ・・・えっと、こいつの弟の葵春って言うんだけど・・・」
「つかなんで・・・居場所」
「馬鹿に付ける薬はないから、せめてGPSと盗聴器をと思って、念のため取り付けといた」
「あーそーですか・・・」

終わり

これだけは言わせてコーナー。
何か、これ、不発度万歳。
本編にはいっさい関わりがありません。あしからづ。