ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

58.風切羽

あたしの指が、キーボ-ドを叩くたびに言葉が生み出される。
言葉は繋がって文章となり、空気のようにそこら辺に漂う。
今までは、誰に気にとめてもらわなくても良かった。
あたしという空気を。
誰が気が付いたって気が付かなくたって関係なかった。
だって、あたしは希望なんて物、まったくもっていなかったもの。
でもね、今、あたしは、沢山の人に自分の作品を知ってもらうって言うのを少しだけ、本当に少しだけ、希望として持っている。
なぜなら、沢山の人に、色んな気持ちがあるんだって言うのを知って欲しいから。
色んな気持ちを、色んな人がもってて色んな愛の形や、色んな憎しみあいや、色んな、とにかく自分ひとりでは体験できないような、そんなことを、ひとつの形として、しって欲しいから。
生きてる内に、体験しないかもしれないけど、こういう体験をしている人もいるよ、的な。
そんな、気持ちを。
なんて、いって、結局自分の満足、自己満足のために作品を描いてるのには変わりない。
誰のためでもない、自分のため。
だから、進歩がない。
諦めていたことに、突然希望を持とうとするのが、無理なことなのかもしれない。

自分が、こうしようって思ったときに、いつも、自分の中で何か都合の良い言い訳をつけて、諦める。逃げ出す。
最悪だな。
諦めていた。
諦めていたけど、諦めない気持ちになったんじゃねぇのか。
我慢、するなよ。
我慢することはない、風切羽が無くても、歩けばいいじゃないか。
ペンギンみたいに、冷たい氷の上をするする滑っていけば、飛んでいくよりも早いことがある。
あんたの言葉を、聞いてくれる人がいるかもしれないんだ。
誰も、聞こうとしてくれなかった、あんたの言葉だ。
本当の、気持ち。
恥ずかしいこと、言ってる気がするな、もの凄く恥ずかしい。
話そうとすると、避けて通りたくなるような、うじうじしてて、最悪で、汚い。
そんなお前をみんなに観てもらえよ。
どうせ、天国なんて無いんだから、何もかも、吐き出しちまえよ。

楽しい話ばかり望んでるような奴に、あたしを語る資格はない。
あたしを全てのみこんで。
あたしの中の、汚いところも、何もかも。
それが怖いなら、近づくな。
あたしは多分、狂ってる。

ほら、もっと。
もっとあるだろう。
お前が言いたかったこと。

それでも、なくしたくない。
貴方を。

最後に行き着いた答えは?

あたしなんていなくなればいい。

上等。

ほんとに?

最悪な答えとして、上等。

笑って良いのかな。

とっくに腐ってぐずぐずの羽だ。
最初から無かったと思って、飛べば怖くないよ。