ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

3.荒野

ここは世界のブラックマーケット。
何でも売ってる市場、巷で売ってるものから、やばいものまで。
世界中のものが売ってる。
場所は不定で時間も未定。
参加できるのは一部の人間だけ。

「これは幾らするんだい?」

恰幅の良いおばちゃんが、透明な容器に入った大根の形をした鳥を指さしていった。

「おねぇさん、良いもんに目ぇつけたね、それは、5000円ぐらいかな、大根足をすらりと綺麗にする、ゴボウ鳥だよ・・・5000円なんて安いもんさぁ」

おっきなベージュのなめし革のとんがり帽子に、膝丈のやパリベージュのコートを着た13.4歳の金髪の男の子が答える。
彼の名は、センテット、隣のカウンターの上に座ってる、ジャンガリアンハムスターがゼラニウム
彼らは今日もブラックマーケットに出品していた。

「じゃぁ、これは?」

オレンジ色のカタツムリを指さしている。

「あぁ、それはね、呪いたい人の鞄に忍ばせると、その人を呪えるって言う。(不幸毎々ふこうまいまい)って代物さ、そうだねぇ、大体、ふつうのところで買うと7百万はするね、僕んとこだと、半額になるけどね」
「本当に?」
「あぁ、どうする?もってくかい?」
「じゃあ、そうしようかしら」

おばちゃんから、350万円を受け取る。
おばちゃんにカタツムリを渡すと、おばちゃんはそそくさとその場を去っていった。

「ねぇ、ゼラニウム、人を呪うための道具が350万だって、何か、おかしいね。」
「そうだね、だって、人を呪うって事は、それ以上のリスクを伴う訳じゃない?どう考えたって、おかしいよ」

鞄に、お金をしまうと、次にサングラスにはねつきの帽子、黒いマントの男がやってきた。

「いらっしゃい」

にっこり笑うと、男は、片手を上げて、言った。

「何か、こう、そうだね、好きな子を振り向かせるような・・・そんなのは、無いかな?」
「あるよ、ポンポンアホウドリの羽。こいつはね、振り向かせたいこの枕に忍ばせると大変効果が・・・」
「それ下さい・・・」

金額も聞かずにそいつは買った。
遠くから、「セージさーん、早く行くよー」と、女の子の声がして、そいつは走っていったから、多分、セージって言う人なんだろうけど、俺には関係ない。


ここは世界のブラックマーケット、騙され、だまし、疑い、信じ、金が行き交う。
何でも売ってます、何でも売ります。
ここは世界のブラックマーケット。
今日も、いつでも、どこでも、場所は不定
それでもやります、ブラックマーケット。
俺らもブラックマーケットと移動します。
だって、世界のブラックマーケットだから。