ひとりがたり

日常のもの・こと・妄想など

22.MD:MIPミッションイッポシブルのテーマ。

このディスクに残された兄さんの遺言の中身を、おれは知らない。
けど、おれを追ってきてる奴はどうやらその中身を、知っているらしい。
このディスクの中身を俺は知りたい。
兄さんも、この中身の所為で殺された。
俺と兄さんは歳が離れてて、あまり合う機会はなかったけど。
兄さんの部屋にだけは入ってはいけないと言う暗黙の了解が、うちにはあったんだ。
だから、それを今日破ろうと思う。

パソコンの画面に文字が映し出されるのを、俺は昔の事を思い出しながら眺めていた。
兄さんが生きてる頃。
俺は兄さんがやばそうな人間にディスクと引き替えに、金を受け取ってるのを何度か見たことがあった。
そのたび俺は、他人の振りをして横を通った。
兄さんも、知らない振りをした。
多分、そのディスクのうちの一枚、それは相当ヤバイ物で、だから兄さんは殺された。
デスクトップが映し出されて、俺は手早くディスクを入れる。
パソコンはディスクを飲み込んで、読みとる。
その時間がやけに長く感じて、俺は落ち着かなかった。
兄さんの部屋は整っていた。
壁にはカレンダーしか貼って無くて、モノトーンの落ち着いた感じ。
俺のロックのポスターだらけの部屋とは大違いだ。
やっとの事で、ファイルが映し出される。
MDと書かれたファイルがいくつかあって、そのうちの癸韻魍いてみる。
画面が変わって、緑になる。
文字の羅列。
俺にはとうてい理解不能
諦めて、MD5を開く。
辛うじて、俺の読める文字が見て取れた。
「その結果と、改良点」
なんだかちんぷんかんぷん。
頭の中がだんだんぱにくってきた。
こんな物のために、兄さんが変な奴らに殺されたかと思うと頭に来る。
でも、このディスクを俺にタクしたって事は、何か解読の手段があるはずだ。
兄さんが、俺に教えてくれたことを、よく思い出す。
いくつか試したけど、駄目。
しばらく考えて、兄さんに教えてもらった暗号を入力する。
小さい頃から、ずっと、兄さんと俺の合い言葉だった。
兄さんが、家から閉め出されると、ふざけて俺達はその言葉を合い言葉にして、俺が鍵を開けていた。
「Mikan-Dainamaito」
兄さんらしい。
俺達しか知らない暗号。
緑の画面が、普通のワードの画面に変わって、俺が読める字に変換された。
「その方法と結果と改良点」
読み進めていく。
それは、タイムトラベル装置の原理が書かれた書類だった。
兄さんは、これを絶対に外に持ち出さなかった。
けど、裏切られ、このファイルをどこに隠したか絶対に話さなかった。
だから、殺された。
これを悪事に利用すれば、大変なことが出来る。
俺は怖くなって、ディスクを取り出す。
はっと、振り返ると、母さんが俺のすぐ後ろに立っていた。
「何だ、母さん・・・」
俺は、安心して、視線を足下へ移す。
「それを、よこしなさい」
母さんの手には包丁が握られてる。
俺は、苦笑。
「何だ、あんたもか・・・」
母さんはにっこり笑った。